風が、
芽吹く頃の匂いになった。
今日は春一番が吹いているらしい。
春一番といえばいつも寒さは残っているのに
今年は嘘みたいに暖かい。
この匂いは好きだけど、
ちょっと頭が痛くなる。
子供の頃、春が大嫌いで
何故かというと、
変化に順応しにくい子だったので
進学とか進級とか、
環境が変わるのが憂鬱だった。
学年が変わって、教室の階が変わるのすら嫌だったくらい。
時が経ち、
順応しにくい症状は状況により出るとしても
むしろ土着しない性格になってしまった。
変化を自ら求めるようになってしまった。
そうして、
大人になってからは、
いつしか春の憂鬱はなくなっていた。
今思うと、
自分の意志が及ばないところで
有無を言わさず
環境が変えられていく事への
違和感だったのかもしれない。
今でも夜桜の下で亡霊のように佇んでは
そんな子供の頃の自分を思い返してみる。
不器用ながら、必死で受け入れようとするあの頃の姿が
ぼうっと浮かぶ花びらの向こうに見える気がする。
今年はどこの桜の下で亡霊になろうか、
いまから桜の木を物色するのだ。